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2013年度 建築工学科 春期海外研修旅行報告(後編:スペイン・ドバイ)

カテゴリ :
行事報告
更新日時 :
2014年03月27日

文責:岩田 伸一郎(企画・引率)

前編のポルトガル編に続き、後半のスペインとドバイの様子を紹介する。
※画像はクリックで拡大

<スペイン>
ポルトガルのリスボンからスペインのマドリードへは、ホテル・トレインと呼ばれる夜行寝台列車で移動。旅も中盤に差し掛かり、緊張がほぐれて疲れが出始めるタイミングでの夜行寝台列車の移動は不安要因であった(前日に数名の参加者が体調を崩し、正直なところかなり焦った...)が、意外にも参加者の感想は快適でよく眠れたとのこと。ホテルだとついつい夜更かししていたが、列車の中ではすることがなかったからだとか。何はともあれ、無事にクリアできて一安心だ。
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⑤マドリード
■プラド美術館
スペイン王室の絵画コレクション(中世から19世紀の絵画)を展示する美術館で、絵画の収蔵数では世界最大規模。2006年に完成したラファエル・モネオによる増築棟は本館の裏手に位置し、本館との敷地のレベル差を活かして機能的にも景観的にも見事に解ききっている。内部は写真撮影NGであったため写真をお見せするとこはできないが、増築棟最上階の彫刻の展示室は必見だ。
限られた時間ではあったが、現地ガイドのカルロスさんの解説付きで、主要な絵画はしっかり鑑賞。
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■カイシャ・フォーラム
ミロが手掛けたロゴで有名なカイシャ銀行が、各地に建設するフォーラムの一つ。プラド大通りから少し奥まってひっそりと建っているため、車で走っているとつい見逃しそうだ。元発電所の建物の外壁だけを残し、その上部と地下にヴォリュームを追加するという操作によって元の3倍ほどの規模となっているが、建物の前後にある広場へ通り抜けができる手が届きそうなほど天井が低いピロティのお陰で、圧迫感どころか開放的な印象さえ受ける。外観・内観ともに設計者であるヘルツォーク&ド・ムーロンらのテクスチュアへの強いこだわりが緊々と感じられる。
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■マドリード・バラハス空港ターミナル4(自由行動)
自由行動の日に、9名の参加者を誘って訪れたのが、このターミナル。スペイン人建築家のエストゥディオ・ラメラとリチャード・ロジャースによる設計である。黄色に塗られたフレームを反復させた明解な構造システムと竹で仕上げられた天井曲面のうねりが、うねりの山部分に開けられたトップライトの光によって幻想的な陰影を生み出している。システマチックな手法から生まれる空間の複雑さや多様さは本当に美しく、空間構成もシンプルで機能的そうだ。
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■マタデロ・マドリード(自由行動)
2007年にオープンした敷地面積が16万㎡を超える巨大なアートセンターで、20世紀初頭に建設された屠殺場と家畜市場であった建物群が、複数の若手建築家たちによって一つ一つ新しい機能と空間を与えられている。午前中に訪れたのだが、個々の建物の平日のオープン時間は16:00とのことで、エントランスの建物以外は外観のみの見学となった。ストックを活用して新たな機能を作り出す手法は日本ではまだまだ特殊解であるが、膨大な歴史的ストックを抱える欧州では、新築よりもむしろこのような手法の方が一般解なのだと改めて実感した。
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■アトーチャ駅
バルセロナ行きのAVEやトレド行きのAvantが発着するターミナル駅で、欧州の駅舎の典型とも言える元の建物は植物園のような待ち合いスペースに変わり、列車のホームは新たな建物として隣接して建設されている。大空間の待ち合いスペースは静かで時間がゆっくりと感じられる場所で、読書にふける人々もちらほらと見受けられ、「駅=くつろぐことのできる公共の場」という概念は日本の駅舎も見習ってほしい。宿泊先の目の前のプリンシペ・ピオ駅も同様の旧駅舎駅空間がショッピングモールに改修されており、こちらも見応えがあった。
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■ソフィア王妃芸術センター(自由行動)
イアン・リッチーが改修したガラスのエレベーターが象徴的な本館とジャン・ヌーベルによる妖艶な光沢の深紅が印象的な新館から成る近代アートの美術館で、ピカソの「ゲルニカ」が展示されていることで有名だ。個人的にお目当ては新館の建築で、夕暮れ時に訪れると巨大な屋根の赤い天井面に、美術館の中庭の光や前面道路を行き交う車のライトの動きが映り込み、何かの映像をみているような不思議な感覚を持った。建物全体を覆う大屋根にはいくつもの開口が開いていて中庭には雨が降り込むため、観光客やガイドには不評のようだ。
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トレド(自由行動)
滞在3時間の強行スケジュールで訪れた、マドリード郊外に位置する世界遺産の城塞都市。定番の観光地なので説明は不要であろう。別行動でトレドに来ていた3組がカテドラル前で同時にバッタリ出会してしまうほど小さな街なので、3時間でも十分に散策を満喫することができた。
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⑥バルセロナ
133mグリッド状に整備された街区が特徴的で、方位の確認が容易なので確かに京都の市街地にいるときと似た感覚を持つ。同じスペインでもマドリードと明らかに印象が変わり、どこか陽気な気分にさせてくれる街だ。バルセロナ初日のチャーターバスでちょっとしたサプライズがあった。配車されてきたバスは、なんとメッシやイエニスタらも使用しているバルサチーム仕様。選手専用バスに乗ることになったのは様々な事情が偶然に重なったためらしい(経緯を知りたい人は、私のFacebookまで)。行く先々でバスの写真を撮られ、不思議な一日となった。
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■サグラダ・ファミリア
サグラダ・ファミリアを訪れたのは実に20年ぶりで、外観の印象はあまり変化を感じられなかったが、2010年11月のローマ法王の訪問に合わせて完成させたという内部は、20年前に見た倉庫兼作業場とは別物の、強烈な垂直性を有する大空間に玉虫色の光が溢れていた。植物をイメージさせる柱の造形のためか、虫にでもなったような錯覚を受ける。地下の工房には、石膏の3Dプリンターが4,5台並んでおり、新しい技術が工期の大幅な短縮に貢献しているようだ。完成予定は2026年とのことで、それに合わせてまたバルセロナの研修旅行を企画たい。
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■グエル公園
ガウディの建築群がユネスコ世界遺産に登録されて以来、それまで以上に観光客数が増加したとのことで大混雑であった。タイルの色彩の鮮やかさも然ることながら、その先に一望することができるバルセロナの街や海の眺めが素晴らしい。ベンチに腰掛けて景色を楽しみながら、ぼーっとできればさぞ気持ちよいのだろうが、人が多すぎてとてもそのようにできる雰囲気ではない。
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■バルセロナ・パビリオン
建築総合コースの参加者にとっては、2年生の最初の設計課題で参考事例として説明を受ける建築と言うこともあり、実際にその場に立っていることに感慨深げな様子だ。オリジナルでは内部は外部が連続して閉じていないため、後から防犯用に数枚のドアが追加されて、普段はそれらが設置されているそうだが、タイミングよく期間限定でオリジナルの状態を見せているときに来ることができたようで運がいい。
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■サンタ・カテリーナ市場(自由行動)
元々あった市場の再生プロジェクトとして2005年に完成している。屋根の斬新な色使いに目を奪われるが、よくみるとどれも周囲の街の中にある外壁や樹木の色なのだと気付く。隆起する屋根を支えるむき出しの鉄骨の躍動的な造形は、市場の活気を象徴しているようだ。建物の済には、市場の下から出土した遺跡を見ることができる展示空間も設けられていた。市場に並んだ色鮮やかな食材に引きつけられ、食べ歩きをしながらつい長居をしてしまった。設計者は若くして亡くなられたエンリック・ミラーレスで、ベネデッタ・タグリアブエがその後を引き継いだそうだ。
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<アラブ首長国連邦/ドバイ首長国>
⑦ドバイ
研修旅行もいよいよ最後の訪問地。摩天楼が建ち並ぶ新興開発地区から石油時代到来以前に作られた街区や砂漠までが狭いエリアに凝縮されていて1日で体験できてしまうのがドバイという街だ。予想に反して涼しくて、日中も半袖ではすこし肌寒く感じる程であった。深夜0時45分着予定の飛行機が大幅に遅れて、ホテルに到着したのは午前3時半。モスクの予約時間の関係で十分に疲れが取れないまま朝8時半にホテルを出発したため、さすがに午前中は参加者全員がバスの中でぐったりしていたが、目的地に着くとパッと起きて行動する当たりは、さすが若さの賜物だ。
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■ジュメイラ・モスク
ドバイでイスラム教徒以外に開かれ見学することのできる唯一のモスク。女性は髪を隠さなければならないとのことでスカーフが配られた。中ではイスラム教の六信五行や風習についての説明があり、礼拝の作法についての実演もあった。寝不足ではあるが宗教施設での居眠りは失礼と、みんな眠気を必死にこらえて集中していたが、全て英語で行われる説明がさらに睡魔を刺激したようだ。建物自体はまだ新しいもののようだが、ドバイでは最もアラビアらしさを感じられた時間であった。
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■バージュ・カリファとドバイ・モール
世界一の828mの高さを誇るバージュ・カリファへは、足下の巨大ショッピングモール内からアクセスする。この日は朝から砂塵で視界が悪く、現地ガイドからも残念ながら今日の展望台からの眺めは期待できないと告げられていたのだが、展望台の予約時間が近づくにつれてみるみる天候が回復してくれた。研修旅行期間中、ずっと天候に恵まれ、恐らく参加者の中に強力な晴れ男・晴れ女がいてくれるのだろう。中間階よりやや上の442mに位置する展望台の「At the Top」へは高速エレベーターで1分で到達し、眼下に海岸線と砂漠に挟まれたドバイの街のパノラマを無事に望むことができた。
高さばかりが注目されるバージュ・カリファであるが、その佇まいもとても美しい建築だ。設計はアメリカ最大の設計事務所であるSOMで、日本では六本木の東京ミッドタウンの設計でおなじみだ。
足下のドバイ・モールは1,200店舗が入店する世界最大規模のショッピングモールで、世界最大の水槽でダイビングも体験できる水族館のほか、スケートリンクやキッザニアなど数多くの娯楽がこれでもかと集結している。暑いドバイでは、休日を室内で一日中過ごすことのできる巨大ショッピングモールが人気なのだとか。深夜までオープンしているため、飛行機の時間までの研修旅行の最後の時間を、食事をしたりファウンテンショーをみたりと思い思いに過ごすには最適だった。
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■バスタキヤ地区
歴史的な建物を保存した地区で、日本の伝統建造物群保存地区のようなものであろうか?もともと住居であったと思われる建物は、ギャラリーや店舗として利用されていた。上空の風を捉えて室内へ導くウィンドタワーは、パキスタンのバットギアをはじめ、西アジアから北アフリカの乾燥地帯に広く見られるパッシブな空調システムだ。デザインは異なれど自然を利用する同様の原理が世界中に見られることは興味深い。
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少々長くなったが、以上が2013年度の海外研修旅行の概要である。前・後編あわせて100枚を超える画像を掲載したが、紹介できていない見学先もまだまだあり、とても書き切れそうにない。是非とも続きは参加者から聞いてほしい。かなり端折って説明したつもりだが、それでもかなりのヴォリュームとなってしまったのは、この13日間がそれだけ濃密だったということだ。この濃密さは、個人旅行ではなかなかできない大学の研修旅行ならではの特徴だ。
はじめての海外旅行となった参加者が多かったようだが、これから建築を学んでいくと今回の体験がいかに貴重な財産になったのかにきっと気付いてくれるはずだ。また、「英語をちゃんと勉強したいと本気で思った!」と言う感想も聞かれ、いろいろな意味でこの研修旅行を自分のモチベーションを高める切っ掛けにしてくれると嬉しい。
2014年度の研修旅行の企画がそろそろ始まる頃だ。企画・引率の役目は他の先生にバトンタッチするが、今度はどのような企画になるのか楽しみだ。今回参加しそびれてしまった方には、在学中に一度は参加してみることを強くお勧めしたい。(The end)

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